AIシステム調達RFPの作り方で重要なのは、候補各社へモデル名や機能数を答えさせることではなく、自社の業務シナリオで成果、統制、総費用、退出可能性を比較できる質問と証拠をそろえることです。対象は、初めて生成AIシステムを調達する業務オーナー、調達責任者、情報システム、セキュリティ、法務、財務、評価委員です。本稿を使い、要件、回答様式、評価票、契約交渉事項を一つの調達パッケージへまとめます。
AIシステムRFPは調達チームと決裁権限を先に固定する
AIシステムRFPを書き始める前に、業務成果、技術、情報管理、契約、費用を誰が採点し、誰が最終決裁するかを固定します。調達責任者は日程、公平性、候補者との連絡、評価記録を管理し、業務オーナーは対象業務、期待成果、受入、継続・停止へ最終責任を持ちます。技術責任者は連携、性能、ログ、復旧、運用可能性を確認します。情報管理・セキュリティはデータ流れと統制、法務は契約と適用法、財務は予算と三年総費用、評価委員長は採点基準と利益相反を管理します。
候補選定と業務受入を一人だけで決めると、提案の魅力が現場適合より優先されます。評価委員は、提案書採点者、シナリオ採点者、契約審査者を分け、最終会議で根拠を統合します。過去の取引、個人的関係、候補製品の導入支援経験など、判断へ影響し得る関係を事前申告し、必要なら採点から外します。質疑への回答は全候補へ同内容を同時刻に共有します。
調達上の根拠には、デジタル庁と経済産業省・総務省が公表した生成AIの公式ガイドライン[1][2]、NISTが公開した任意のAIリスク管理フレームワークと生成AI向けプロファイル[3][4]、サプライチェーン審査の公式クイックスタートガイド[5]を用いています。これらは行政機関・標準化機関による公式資料で、個別製品を比較した実証研究や原著論文ではありません。評価シナリオ60件、根拠正解率98%、100点配点、三年総費用という数値は、資料に記載された標準値ではなく、比較方法を具体化するための編集部案です。
| 意思決定 | 最終責任者 | 作業担当 | 承認証拠 |
|---|---|---|---|
| 業務範囲と成果 | 業務オーナー | 現場代表、業務分析者 | 対象・対象外・現行値を記した要件票 |
| 評価方法 | 評価委員長 | 業務・技術・リスク評価者 | 配点、失格条件、採点例 |
| データ提供 | 情報管理責任者 | データ管理者、法務 | 匿名化、用途、保持、削除条件 |
| 契約締結 | 権限規程上の契約責任者 | 購買、法務、サービスオーナー | 評価結果と契約差分の承認記録 |
| 本番受入 | サービスオーナー | 業務検収者、技術運用者 | 固定ケース、切戻し、教育の合格 |
この方法が向かないケース:導入製品が経営判断で確定し、比較結果を後付けするだけの調達、評価データの利用権限がない案件、業務オーナーが不在の案件ではRFPを配布しません。単一候補との契約交渉が必要なら、その事実を明示し、競争調達を装わず適切な社内手続を選びます。
解く業務と調達しない範囲を定義する
要件定義は「生成AIチャットを導入する」ではなく、開始と終了を特定できる業務で書きます。想定例として、社内規程に関する月1,200件の問い合わせについて、質問受付から根拠条項を伴う回答案の作成までを対象とし、最終回答と規程解釈は担当者が承認します。現行では1件平均18分、差戻し率8%、回答までの中央値6時間と測ります。AIの採用は、この現行値と比較して判断します。
対象外には、人事・懲戒の個別判断、法的助言、公開前のM&A情報、緊急事故の指揮、外部への自動送信を置きます。将来対象にする可能性があっても、今回の提案価格と評価から除外します。対象外を曖昧にすると、候補各社が広い機能を提案して得点し、必要な工程の品質比較が薄くなります。「あると便利」な機能は任意提案欄へ分け、必須評価と混ぜません。
| 定義項目 | 社内規程問い合わせの想定例 | 提案者が答えること |
|---|---|---|
| 対象 | 承認済み社内規程から回答案と根拠を提示 | 実現方法、前提、制約、運用者 |
| 現行母数 | 月1,200件、直近6か月7,200件 | 利用量に応じる容量と価格 |
| 最低成果 | 根拠正解率98%以上、重大誤案内0件 | 測定方法と未達時の対応 |
| 人の責任 | 担当者が最終回答、規程責任者が例外解釈 | 承認画面、権限、記録の実現方法 |
| 対象外 | 個別法務判断、外部自動送信、未承認文書 | 対象外を検知し停止する方法 |
NIST AI RMF 1.0は2023年1月26日公表の任意フレームワークで、組織がAIの信頼性に関する考慮を設計、開発、利用、評価へ組み込むことを支援します[3]。RFPでは「AI一般の安全」を要求するだけでなく、自社の利用状況、影響、許容度へ落とし込んだ成果と統制を示します。
評価シナリオと正解表を先に作る
提案を受けてから評価データを作ると、特定候補の得意な機能へ問題が寄ります。RFP配布前に、通常36件、複数規程を横断する例外12件、回答してはいけない禁止6件、過去に誤案内した6件の計60件を用意する想定です。通常件だけで精度を測らず、根拠なし、旧版規程、曖昧な質問、権限外文書、相反する条項を含めます。件数は業務の重大性と母集団に応じて評価設計者が調整します。
正解表には期待回答、必須根拠、許容する表現差、人へ戻す条件、重大誤りの定義を記載します。業務熟練者が作り、別の規程責任者が独立確認します。二人の判断が割れたケースは、ベンダー採点から一時除外し、業務基準の不明確さとして別管理します。評価シナリオ自体へ個人情報や秘密情報を含める場合は、候補へ渡せる権利、匿名化、削除を情報管理担当が承認します。
配布前には、評価委員二人が候補名を伏せた回答例を10件ずつ独立採点し、失格判定と各観点の点数が一致するかを確認します。たとえば一人が「根拠あり」、もう一人が「根拠不十分」とした場合は、回答例に合わせて正解表の必須根拠を具体化します。10件中2件以上で合否が割れる間はRFPを配布せず、評価基準を修正して再採点します。この10件と2件という値は制度上の基準ではなく、採点者が共通の証拠から再現可能な判断を出せるかを見る初期確認の想定値です。
| 区分 | 件数例 | 検証する能力 | 失格につながる誤り |
|---|---|---|---|
| 通常 | 36件 | 根拠探索、要点、必要項目、再現性 | 金額・期限・対象者の重大な取り違え |
| 複合例外 | 12件 | 複数資料、優先関係、情報不足の識別 | 矛盾を隠して一つに断定 |
| 禁止 | 6件 | 権限外・対象外を止める能力 | 禁止情報を表示または処理 |
| 過去失敗 | 6件 | 既知の事故条件に対する防止策 | 同じ重大事象を再現 |
NIST AI 600-1は2024年7月26日公開の生成AI向けAI RMFプロファイルで、掲載ページは2026年4月8日更新です。生成AIに固有または増幅されるリスクを、組織の利用状況に合わせて扱う資料です[4]。評価シナリオには、もっともらしい誤情報、情報漏えい、過度な依存など、自社用途で現実に起こり得る失敗条件を反映します。
機能・非機能要件を検証可能な文へ直す
要件は「高精度」「使いやすい」「堅牢」といった形容詞ではなく、入力、処理、出力、条件、証拠を含む文にします。「質問へ正確に回答する」なら、「承認済み規程だけを検索し、回答案へ文書名・版・条項・参照箇所を表示し、根拠がない場合は回答を保留する」とします。性能は同時利用者、応答時間の百分位、対象時間帯を示します。アクセシビリティ、管理者操作、ログ検索、データ出力も受入試験で確認できる形にします。
| 曖昧な要求 | RFPへ記載する要求例 | 受入証拠 |
|---|---|---|
| 回答が正確 | 固定60件で根拠正解率98%以上、重大誤案内0件 | 案件別採点表と再実行結果 |
| 応答が速い | 平日9〜18時、同時50人で95百分位10秒以内 | 負荷試験条件と時刻付きログ |
| 安全に管理 | 管理者多要素認証、最小権限、操作ログ365日 | 自社環境の設定とログ出力 |
| 変更へ対応 | 重要なモデル・処理変更を30日前に通知 | 通知経路、影響資料、再試験支援 |
| 終了できる | データ・設定・評価結果を標準形式で出力 | 代表データの移行実演 |
要件には優先度と適用条件を付けます。「必須」は満たさない候補を失格にする項目、「加点」は業務価値に応じて比較する項目、「将来」は現契約価格へ含めずロードマップとして確認する項目です。すべてを必須にすると候補が減り、費用が上がり、実際には使わない機能の証明へ時間を使います。逆に、データ目的、重大事故通知、退出など後から交渉しにくい条件を加点へ落としません。
稼働率99.9%のような数値も、除外時間、測定地点、計画停止、補償だけでなく業務継続と結び付けます。月43.8分程度の停止が数値上許容されても、給与締め日の1時間停止は重大かもしれません。用途ごとの重要時間帯、復旧目標、手動代替を記載し、サービス指標と業務影響を分けて評価します。
データ、権利、変更、事故の条件を示す
候補各社には、入力、出力、ログ、学習・調整データ、処理中間物を分けて回答させます。それぞれについて、利用目的、保存場所、保持期間、アクセス主体、学習利用、再委託、削除、権利、法的要請時の扱いを確認します。「入力データは学習しない」だけでは、ログ保存や品質改善目的の利用が不明なままです。回答は標準契約、個別変更可否、追加費用の三欄に分けます。
デジタル庁の生成AI調達・利活用ガイドライン第2.0版は2026年6月12日に決定され、政府調達向けの調達チェックシートと契約チェックシートを含みます。組織要件、開発・運用工程、基本機能、インプット・アウトプット、期待品質、リスク事象などを確認する構成です[1]。民間企業では直接適用される規則と誤認せず、自社契約で確認すべき論点を抽出する参考にします。
| 論点 | 回答要求 | 必須証拠 | 受入れない回答 |
|---|---|---|---|
| 入力利用 | 目的、学習有無、保持、削除、例外 | 規約条項と自社テナント設定 | 営業説明だけで契約根拠がない |
| 出力・権利 | 権利帰属、第三者権利、補償、利用制限 | 契約案と想定事例への見解 | 利用者責任のみで範囲が不明 |
| 再委託 | 役割、地域、アクセス、追加通知、異議手続 | 現行一覧と変更プロセス | 重要再委託先を開示できない |
| モデル変更 | 通知期限、旧版維持、影響資料、再試験 | 過去通知例と標準運用 | 通知なしで品質が変わり得る |
| 重大事象 | 初報、経過、原因、証拠保全、協力範囲 | 連絡体制と報告書ひな形 | 具体的な連絡期限がない |
AI事業者ガイドライン第1.2版は2026年3月31日版で、AI開発者、提供者、利用者など関係主体に応じる取組と、ライフサイクルを通した管理を整理しています[2]。RFPでは責任を「ベンダー」対「当社」の二者だけに単純化せず、モデル提供者、クラウド、再委託、利用部門を含む責任境界を質問します。
候補各社の回答形式と証拠を統一する
自由形式の提案書だけでは、詳しく書いた会社と簡潔な会社の優劣が内容以外で決まります。必須回答表には、対応可否、標準・個別開発、前提、制約、証拠、費用、提供時期、責任者を記載させます。対応予定は現行対応と分け、提供予定日と契約上の扱いを求めます。機能画面の画像だけでなく、自社評価シナリオでの実演、設定出力、契約条項、運用報告例を証拠にします。
| 列 | 記入ルール | 評価での扱い |
|---|---|---|
| 対応状態 | 現行標準、設定対応、個別開発、将来予定、非対応 | 現行と契約可能な内容だけ本評価 |
| 前提・制約 | 利用量、地域、プラン、連携、データ条件を明記 | 前提不一致は得点を付けない |
| 検証証拠 | 文書名、版、画面、ログ、実演番号を指定 | 証拠なしの自己申告は最低評価 |
| 費用 | 初期、固定、従量、変更、支援、退出を分離 | 三年総費用へ同じ前提で換算 |
| 責任境界 | 提供者、自社、再委託先の作業と承認を区別 | 空白や「協議」はリスクとして採点 |
質疑期間には質問番号を付け、回答が要件を変える場合はRFP改訂版を発行します。特定候補との個別会話で伝えた条件を他候補へ伏せません。締切直前の重要変更には合理的な延長を設けます。候補から代替案を受ける欄は用意しますが、必須要件への回答を省略して代替案だけ出すことは認めません。代替案は効果、制約、費用、評価方法を別紙にします。
NIST SP 1326は2026年7月8日最終版のICT供給者デューデリジェンス手引きで、供給者や製品について関連情報を調べ、取得または既存システムの判断へ使う考え方を示します[5]。提案書だけでなく、所有・支配等、来歴、レジリエンス、基礎的なサイバー実務、供給網階層に関する証拠を、用途の重要度に合わせて求めます。
配点式と失格ゲートで提案を採点する
配点は、業務適合25点、評価シナリオ品質25点、データ・リスク統制20点、運用・変更15点、三年総費用10点、退出準備5点の100点とする想定です。各軸を0から5点で採点し、「軸得点÷5×配点」を合計します。採点者は提案を開く前に、0、3、5点の具体例を共有し、試し採点で10点以上ずれる項目を調整します。
総合評価点 = 業務適合 4.5/5 × 25 + シナリオ品質 4.2/5 × 25 + データ・リスク 4.0/5 × 20 + 運用・変更 3.8/5 × 15 + 三年総費用 3.5/5 × 10 + 退出準備 4.0/5 × 5= 85.15点
85.15点は架空の提案を用いた計算例で、推奨値や実績ではありません。価格点は最安値だけで決めず、承認予算内の候補について三年総費用の差を段階評価します。品質採点者には価格を伏せ、価格採点者には品質コメントを伏せるなど、可能な範囲で先入観を減らします。全採点に証拠番号と短い理由を付け、最終会議で点数だけを読み上げません。
| ゲート | 失格条件 | 判定者 |
|---|---|---|
| データ | 入力の目的外利用・保持・削除を契約で確定できない | 法務・情報管理 |
| 重大品質 | 共通60件で禁止出力または重大誤案内を1件でも発生 | 業務オーナー |
| 管理 | 管理者認証、権限、必要ログの必須条件を満たさない | 技術・セキュリティ |
| 通知 | 重大事故と重要変更の連絡期限を合意できない | 運用・法務 |
| 退出 | 自社データと主要設定を取得・削除できない | サービスオーナー |
85点の候補でも失格ゲートに触れれば採用しません。失格条件は候補を見た後に増減せず、RFP本文で先に開示します。
同一条件のデモと試行で事実を確認する
デモは候補が得意な台本を見せる場と、自社シナリオを検証する場に分けます。前半30分は候補提案、後半90分は共通シナリオとします。共通部分では、同じデータ、制限時間、利用者役、採点票を使います。設定変更を許す場合は作業時間と担当を記録し、本番運用で誰が維持するかも確認します。録画やログの扱いは候補と事前合意します。
- 事前確認:候補環境、データ削除、参加者、質問、採点非公開範囲を合意します。
- 初期設定:候補が必要設定を行い、標準機能と個別作業を区別して記録します。
- 通常試験:選定した通常12件を評価者が同じ順番で入力します。
- 境界試験:複合4件、禁止2件、過去失敗2件を予告せず実行します。
- 運用試験:権限変更、ログ抽出、モデル変更通知、障害連絡を机上で実演します。
- 終了試験:代表データと設定を出力し、試験データの削除証拠を取得します。
RFPデモで使う20件は候補絞り込み用で、最終受入の60件とは一部を分けます。すべてを事前開示するとケース特化の調整ができるため、業務要件は開示しつつ、最終確認用の未見ケースを保持します。一方、隠れた要件を後から出して候補を落とすことは避けます。採点基準、重大誤り、対象外条件は全候補へ開示します。
| 観察 | 測定 | 提案書との差 | 契約への反映 |
|---|---|---|---|
| 回答品質 | 根拠、必須項目、重大誤り、差戻し | 自己申告精度と自社結果を比較 | 受入基準と定期評価へ移す |
| 設定負荷 | 作業時間、専門性、再実行 | 標準対応か個別作業かを確認 | 導入支援と責任を明記 |
| 管理操作 | 権限、ログ、出力、停止時間 | 資料上の可否を自社環境で確認 | 運用手順とSLAへ移す |
| 候補対応 | 質問の正確さ、未回答、訂正 | 提案体制と実参加者を比較 | 担当体制と応答期限を定める |
三年総費用を感応度付きで比較する
三年総費用には、初期設定、ライセンス、従量課金、連携、データ整備、評価、監視、利用者教育、人による確認、変更対応、監査、障害、退出を含めます。候補各社に同じ利用者数、月間件数、入力・出力量、成長率を渡し、含まれない費用を明示させます。税、通貨、価格改定、最低利用、超過単価もそろえます。
三年総費用の想定例 = 初期導入 4,000,000円 固定・従量 18,000,000円 連携・保守 6,000,000円 評価・監視 3,600,000円 教育・確認工数 9,000,000円 変更・監査 2,400,000円 退出準備 2,000,000円= 45,000,000円年平均 = 45,000,000円 ÷ 3年 = 15,000,000円
この金額は計算方法を示す想定例です。最頻シナリオに加え、利用量が計画の50%、100%、150%になった三つの総費用を出します。利用が少ない場合に最低料金が重くなり、多い場合に従量費が急増する契約を見つけられます。価格改定が年1回可能なら、上限または通知猶予を置いたケースも計算します。人の確認時間は品質によって変わるため、デモで測った中央値を使います。
| 利用シナリオ | 件数前提 | 確認工数前提 | 意思決定で見る点 |
|---|---|---|---|
| 低利用 | 計画の50% | 習熟不足で1件12分 | 最低料金と固定運営費の重さ |
| 基準 | 計画の100% | 1件8分 | 予算内か、適格完了単価 |
| 高利用 | 計画の150% | 1件7分 | 従量上限、容量、管理者負荷 |
| 品質低下 | 計画の100% | 修正増で1件16分 | 契約品質と運用損失の関係 |
最安値と最小総費用も一致しないことがあります。ライセンスが安くても、人の修正と連携保守が増えれば三年で高くなります。逆に高品質でも、対象業務の価値上限を超える費用なら採用しません。予算上限を超えた候補は、配点の工夫で採用せず、範囲縮小、条件交渉、見送りを記録します。
評価結果を契約と受入条件へ移す
優先候補を決めた後、評価で確認した条件を契約書、注文書、仕様書、SLA、運用手順へ移します。デモで根拠正解率98%を確認したなら、受入試験、定期評価、未達時の是正へつなげます。モデル変更で品質が変わる可能性があれば、通知、再試験、旧版維持、対象用途停止を合意します。提案書の約束が契約文書に入らない場合、差分とリスク受容者を明記します。
| 評価で得た事実 | 契約・仕様へ置く内容 | 受入確認 | 未達時 |
|---|---|---|---|
| 固定60件が最低品質を達成 | ケース版、指標、再試験、重要変更時の扱い | 本番環境で同じ試験 | 受入保留または用途縮小 |
| 変更通知に30日必要 | 対象変更、通知先、期限、緊急例外 | 通知経路の試験 | 該当機能停止と是正計画 |
| 試験データを削除できた | 削除対象、期限、バックアップ、証明 | 削除証明と例外確認 | 新規データ提供を停止 |
| 旧手順へ45分で戻せた | 復旧目標、支援、連絡、責任分担 | 切戻し演習 | 本番開始を延期 |
期待品質を結果保証にするか、合理的な作業義務と受入・是正を組み合わせるかは、システムの性質、開発範囲、契約類型によって異なります。生成AIの出力変動があることを理由に、受入基準をなくす必要はありません。一方、実現困難な保証を記載しても紛争を増やします。法務、業務、技術が、測定可能性と責任範囲を確認して条文案を作ります。
契約締結前に運営責任を引き継ぎます。調達責任者からサービスオーナーへ、候補比較、未解決事項、評価ケース、採点根拠、価格前提、交渉差分を渡します。受入後は、契約後の品質・費用・変更・事故を月次で追うベンダー管理へ移ります。RFPが完了しても、運用台帳と評価セットが引き継がれなければ、約束を検証できません。
見送り、停止、退出、引継ぎを調達前に決める
RFP作成の停止条件は、評価データの利用権限が未確認、正解表を承認できない、業務オーナーが不在、失格条件を候補配布前に合意できない、必要予算と退出費用の上限がない場合です。候補選定の見送り条件は、全候補が失格ゲートに触れる、最高点が75点未満、三年総費用が承認上限を10%以上超える、重大な契約差分を権限者が受容できない場合とする想定です。
契約後の即時停止条件は、未承認のデータ利用、重大な誤案内の本番影響、管理者侵害、必要ログの喪失、重大事故通知の不履行です。通常停止は、受入品質を2回連続で下回る、重要変更の影響資料が出ない、費用が上限を20%以上超えて是正できない場合です。停止時には旧手順へ戻し、契約解除とは別に業務継続を確保します。
| 退出成果物 | 要求形式 | 確認時期 | 責任者 |
|---|---|---|---|
| 業務データ | 機械可読の標準形式と項目定義 | デモ、受入、年次 | データ責任者 |
| 設定・指示 | 権限、プロンプト、検索設定、変更履歴 | 受入、重要変更、終了前 | 技術運用者 |
| 評価記録 | ケース版、結果、修正、未解決事象 | 月次、終了時 | 業務オーナー |
| 削除証明 | 対象、処理日、例外、バックアップ期限 | 試行終了、契約終了 | 法務・情報管理 |
| 移行支援 | 役割、工数、単価、期間、連絡先 | 契約締結前と更新前 | 購買・移行責任者 |
「将来乗り換えるかもしれない」だけでは退出要件になりません。代表データを出力し、代替環境または人手手順で1件を完了させる実演を契約前デモに含めます。独自形式から変換が必要なら、変換責任、費用、期間を三年総費用へ入れます。退出できない状態は将来の交渉力を下げるため、便利な機能の加点で相殺しません。
AIシステムRFPの着手として採点前の60分会議を開く
次に行うのはRFP本文の執筆ではなく、業務オーナー、調達、情報システム、セキュリティ、法務、財務による60分の採点準備会です。対象業務の直近10件を持ち寄り、その場で「成功」「人へ戻す」「失格」の三つの評価シナリオを各1件作ります。候補製品名は議題に入れず、現行の処理時間、誤り、再作業、外部影響を事実として確認します。
会議終了時に、業務成果の決裁者、評価シナリオの正解承認者、データ提供の承認者、契約条件の責任者、総費用の計算者を一人ずつ記録します。さらに、未承認データの利用、根拠を示せない回答、必須ログの欠落など、点数では相殺しない失格条件を少なくとも一つ決めます。責任者または失格条件が決まらない場合は、RFPの配布日を設定しません。
会議後2営業日以内に、作成した三つのシナリオを候補各社が共通形式で回答できる質問票へ変換します。調達担当者以外の評価委員が試しに採点し、同一証拠から一致する合否を出せることを確認してから、残りの評価ケースとRFP本文の作成へ進んでください。
参考文献・出典
- デジタル庁「行政の進化と革新のための生成AIの調達・利活用に係るガイドライン」第2.0版、2026年6月12日(参照日:2026年7月30日)。AIシステム調達RFPの要件区分と契約確認事項を整理する公的な一次資料として参照。
- 経済産業省・総務省「AI事業者ガイドライン」第1.2版、2026年3月31日、掲載ページ最終更新2026年4月1日(参照日:2026年7月30日)。
- NIST, “Artificial Intelligence Risk Management Framework 1.0,” NIST AI 100-1, 2023年1月26日(参照日:2026年7月30日)。
- NIST, “Artificial Intelligence Risk Management Framework: Generative Artificial Intelligence Profile,” NIST AI 600-1, 2024年7月26日公開、掲載ページ更新2026年4月8日(参照日:2026年7月30日)。
- NIST, “Cybersecurity Supply Chain Risk Management: Due Diligence Assessment Quick-Start Guide,” NIST SP 1326 Final, 2026年7月8日(参照日:2026年7月30日)。